1932年撮影の沖縄映画を復元〜情報求む!

右端が切れている。

1932(昭和7)年の沖縄を記録した短編映画『沖繩縣の名所古蹟の實況』は、長いことその存在を忘れられた映画でした。それが昨年、上映用の35mmフィルムと二種類のベータカムのテープという形で発見され、このたび可能な限り原版に近い形での復元を行いました。2017年8月22日。無事に沖縄県立図書館において発表させていただきましたので、ブログでも御報告いたします。

映画『沖縄縣の名所古蹟の實況』より奥武山公園

タイトル:『沖繩縣の名所古蹟の實況』
製作年 :1932年
製作・配給:日布映画株式会社
プロデューサー:渡口政善
公開:1933年2月2日 日本館にて(ホノルル)、沖繩では1962年公開記録あり
フィルム:35mm、白黒、無声映画、全長409m(うち検閲により6m切除)

※参考資料:世良利和著「琉日布合作の無声映画『執念の毒蛇』をめぐって」


怪談映画『執念の毒蛇』との関係

右端が切れているのは、サウンドトラック部分まで映像があったためと思われる。

製作したのはハワイ移民の渡口政善。日本本土から映画監督の吉野二郎を招いて、沖縄ロケの映画を二本撮りあげます。一本は現存する最古の沖縄劇映画として知られる怪談映画『執念の毒蛇』です。これは現在35mmフィルムが沖縄県立博物館・美術館に収蔵されています。『沖繩縣の名所古蹟の實況』は、その同時上映の作品として、同時期に同じスタッフで撮影されたと考えられています。しかし、『執念の毒蛇』はスタッフのクレジットが記載されているため、すでにパブリックドメインとなっていることがはっきりしていますが、『沖繩縣の名所古蹟の實況』の方は、クレジットが付いていないため、ややグレー那部分も若干残されていると言うのが実情です。今後も製作者である渡口政善本人の情報や、親族らの情報を募りながら、正式な利活用を目指していこうと考えています。

懐かしの映像の数々

沖繩県立師範学校と弁財天堂

『沖繩縣の名所古蹟の實況』は、そのタイトルの通り、沖縄の名所古蹟を撮影した紀行ものの記録映画で、さつえいの1933年にハワイにて上映されました。ほんの10分ほどの短編映画ですが、戦前の沖縄の風景が数多く収められています。そのロケ地をざっと紹介すると、
那覇市全景、波の上宮、護国寺、沖縄電気会社、河津旅館、奥山公園(奥武山公園:字幕のみで映像は消失)、招魂祭の実況(場所は奥武山)、首里市全景、首里城跡、円覚寺、沖縄県師範学校、忠臣護佐丸の墓、西原製糖工場、中城城跡、普天間神宮、北谷街道と北谷モーシの墓、嘉納製糖工場と比謝川橋、蘇鉄、恩納温泉、名護町及び轟の滝、羽地銅山、當山久蔵の像と金武村、今帰仁城跡と源為朝公の墓、渡久地全景、そして最後は撮影隊が帰る船上からの移動ショットで那覇港。

旧那覇市街

冒頭の空襲で消失する前の旧那覇市を撮影したパンショットは、当時の市役所の塔の上から撮影されており、手前の旧市街中心部立派な街並みから、遠景に漫湖や奥武山公園、ガジャンビラとその松並木までが見通せる眺望。首里城跡の周辺では、弁財天堂越しに見える沖縄県師範学校の堂々たる校舎。美しいS字を描いて流れる比謝川に架かる鉄軌道の橋。子供達があふれかえる活気のある名護の大通り。そして那覇港から出港する船上からの移動ショット。など、素晴らしいカットを観ることができます。

復元作業-不幸中の幸いか?

比謝川にかかる鉄軌道

しかし、復元ができたと言っても、残念なこともありました。実は発見されたフィルムの損壊がひどく、そこからの復元はもはや不可能な状態でした。それでも捨てる神あれば、拾う神あり。この映画は実は1998年に一度発見されていたことがわかっていて、その時にスクリーに上映された映像を撮影したベーカムのビデオが二種類存在していたのです。撮影したのは琉球朝日放送(QAB)と沖縄テレビ放送(OTV)の二つの民放局。その時はフィルムの正体が判明せず、著作権の事情もわからないままに、ふたたびフィルムは倉庫に眠り、気が付いた時にはボロボロの状態になっていたわけです。

今回の復元は、この二つのビデオテープの映像を付き合わせ、状態の良い映像や、消失箇所を補うように編集を行いました。それゆえに画質的には、フィルムほどの明瞭さはもはや望むことはできませんでしたが、その貴重な映像は、どのような形であれ修復して残すだけの価値のあるものだと考えています。

放送局二社の映像提供による復元作業の実現

名護の大通り

同時期に撮影された『執念の毒蛇』は、2002年に著作権の保護期間が満了したことは聞いていたので、この作品もすでにパブリックドメインとなっているはずです。ならば速やかに公的なアーカイブに収蔵し、より多くの人の目に触れるようにすることが適切であろうと、私たちは考えました。そのことを素材を持っているQAB、OTVに提案したところ、両社ともその提案を快諾。今年になって、その素材の提供を受け、私ども株式会社シネマ沖縄にて映画を復元することができました

詳細はまたこのブログで連載したいと思いますが、今日のところはお知らせ程度にしておきたいと思います。

『沖縄縣の名所古蹟の實況』上映の予定

那覇港

上映はまだ参考試写的な形ですが、以下の2カ所が決定しています。

◎2017年9月2日、3日、ハワイで開催されるオキナワフェスティバル内で、沖繩県立図書館のブースにおいて英語字幕付きのバージョンを、参考上映いたします。

◎2017年9月8日 京都の”おもちゃ映画ミュージアムで開催される『市民が写した沖縄戦後史〜OKINAWA8ミリ映画発掘公開プロジェクト』においても、調査のための参考上映を行います。

沖繩県内での一般お披露目、決まりしだい御報告させていただきます。

(文:真喜屋力)

1 Trackback / Pingback

  1. 沖縄アーカイブ研究所

Leave a Reply

Your email address will not be published.


*