高良一と中城城跡高原ホテルの謎を掘るイベント

【イベントレポート】収集した8ミリ映画から1テーマに絞り込み、ゲストを呼んで深掘りしていく上映&トークイベント。今回はゲストに料理研究かの渡口初美さんをお招きして、沖縄の戦後の最重要人物の一人「高良一」がテーマ。ちなみに渡久地初美さんは、高良一さんの長女です。

▲高良一氏

 

» 高良一(たから・はじめ) | ウィキペディア


サウダージ8ミリフィルム〜あんな沖縄こんな沖縄
第3回「伝説の中城城跡遊園地と高良一」

期日:2019年7月21日(日)13:00〜15:00
会場:Punga Ponga
参加費:1,500円+オーダー

ゲスト:渡口初美さん


もともとは中城城跡公園にあった遊園地や動物園の8ミリ映像を肴に、あんなものがあった、こんなものがあったと、ほがらかな話をする予定だったのですが、遊園地を造った高良一さんについて調査するうちに、話の中心がそちらにシフト。ついでに8ミリ映像には映っていませんが、最近取り壊しが始まった「中城城跡高原ホテルの廃虚」の話題もあって、高良一の仕事と人となりを知る、笑いと感動のトークイベントになりました。

もちろん渡口初美さんのキャラクターも炸裂して、話題が膨らみ、転がり、予想通りの時間延長。本当に楽しい会となりました。

仕掛けるほうとして印象的だったのは、渡口さんが、お父様の高良一さんの話をしたがっていることでした。これだけ大物でありながら、家族として父親の業績を語り継いで欲しいという思いがあるということに、心が揺さぶられました。今回のイベントに、単なる好奇心を満足させる以上の血を通わせてくれたように思いました。

全体の構成は、おおまかに3部構成。

  1. 懐かしの8ミリ上映
  2. 高原ホテル廃虚 探訪
  3. ラッパの高良が残した提言

1)上映した8ミリの中で、すでにネット公開しているのは以下の通り

» 中城城跡 動物園

» 中城城跡の馬場と茅葺き屋根の集落

» 中城城跡公園 遊園地

» 中城城跡公園にドライブ

▲上映された8mmの映像より

 

2)続いて先日QABの取材で、解体中の高原ホテルに入った時のレポートと、建物の分析。これは取材時に撮影した廃虚内部の写真に加えて、僕の考察を報告する内容。

▲密林にそびえるマヤ文明の遺跡のような高原ホテルと取材班。

 

▲QABのスタッフとともに廃虚内を行くようす。

※ちなみにこの取材の放送日は2019年7月24日(水)の夕方のニュース

この取材と、ネット上に数多くある写真と動画のおかげで、今までぼんやりとイメージしていた“迷宮”のイメージが見えてきて、説明するためにもと簡単な図面を作って解説。

これによって、僕も改めて高原ホテルのイメージが掴めました。とにかくブロックごとに建物の構造からして異なっている。また大規模な整地作業などもしていないらしく、場当たり的。なんどもやりなおしをしながら造ったという、建築時の混乱ぶりが目に浮かぶ…。なんて話をいたしました。

▲簡易な図面で、ホテルの構造を解析!ブロックごとに建物の構造が変わり、かなりの行き当たりばったりな感じが伝わってくる。

 

3)最後はプレゼン形式で「ラッパの高良」と言われるほど、ぶっ飛んだ高良一の発想を紹介。あわせて視覚化して見せるという内容。高原ホテルもさることながら、国際通りの名前の由来になった「アーニーパイル国際劇場」や、「那覇都市モノレールの草案」についての話。さらには実現はしていませんが「石川運河」「伊江島架橋」「与論-奥の海底トンネル」「首里-識名 つり橋」「先島連結」という、高良一が生前にぶち上げたトンデモ企画を紹介。多いに盛り上がりました。

一番盛り上がったのは下の画像。高良一が最初に中城城跡の公園事業に関わったのが1955年。1957年当時の新聞広告にあった、中城城跡ホテルの当初の完成予想図を、実際に立てようと計画した場所に合成した写真。ホテルのデザインと遺跡の真上にホテル建築と言う文化財無視の野望は、当時も大反対にあって中止においこまれます。

あらためて視覚化することで、高良一さんの自由な発想に驚かされると同時に、大爆笑になった場面でもあります。

▲1957当時の中城ホテルの構想図を、中城の画像にはめ込んだ絵。最初の構想ではホテルは城郭の上だった。(作画:真喜屋力)

さらに石川-仲泊をむすぶ運河建設も少しオーバーに視覚化。確かにこの場所なら掘れそうだと言うリアリティーを感じます。

▲沖縄本島のくびれ、石川と仲泊をつなぐ運河構想を,ややオーバーに視覚化。(作画:真喜屋力)

 

もちろんその端々で渡口初美さんから語られる家族の物語が,興味深い。さすがに全部は書けませんが、逆に言えばクローズなイベントならではの楽しみでもありました。

いっけんすると8mmフィルムのアーカイブとは異なるイベントですが、やはり動画が残っていたと言うことから膨らんでくる好奇心と言うものは強いのです。だからこそアーカイブを残し、多くの人の心を刺激したいと、あらためて感じたしだいです。

では8月の会もお楽しみに。

(文:真喜屋力)


8月の予告!

8月18日(日)昼の部)13:00〜15:00 /夜の部)19:30〜21:30

会場:Punga Ponga (Facebookページ→

第4回「沖縄の祭祀と信仰 ウンジャミ、斎場御嶽など」
と題して、8ミリの中の祭祀の映像をお送りします。

ゲストは調整中です。

2 Comments

  1. とても貴重な資料とフィルムをどうも有難うございました。中城ホテルは廃墟ばかり注目されていましたが、私は営業していた頃の様子が知りたかったので、こちらでカラーのイメージを拝見できて嬉しいです。高良さんの功績やお人柄も紹介されていて、とても興味深く拝見しました。ホテルの簡易図面は分かりやすくて有り難いです。因みにプールはどのあたりにありましたか?遠くに住んでいるので、こういうイベントに参加出来なくて残念ですが、これからも頑張って下さい!

  2. コメントありがとうございます。プールはホテルの西側に隣接していました。このページの写真で、撮影隊がジャングル越しにホテルの廃虚を見ているカットがありますが、廃虚の右側の木々に紛れて、プールの滑り台の手すりがうっすら見えています。探してみてください。

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