先日90本のフィルムが寄贈されました。撮影者は郷土史研究家の福地唯方(ふくち ただよし)さん。ご家族から那覇市歴史博物館を経て私たちのところへ届いたしだい。
郷土史家らしく、箱やリールには細かく内容がメモ書きされていて、そのラインナップたるや、どれも興味をそそられる内容ばかりです。
ざっと見るだけでも沖縄本島、八重山、宮古島、伊是名、伊計島、久高島などの祭祀や芸能の記録や、組踊りなどの舞台関係、果ては札幌オリンピックの聖火リレーまで、しかも60年代中ごろから復帰の年に至るまでの貴重な記録の数々。
気になるフィルムをいくつか拾ってみると
1966年11月26日「二童敵討」
名だたる名優たちの組踊り「二童敵討」の舞台。クレジットまできちんと書かれています。他にも国立劇場の舞台など数本。
1970年 宮古 狩俣の葬式
宮古島の狩俣の葬式。非常にニッチなジャンル。特に8ミリ映画は家族の楽しい映像を撮る場合が多いため、葬式の記録と言うのは珍しい。しかも狩俣 というのがそそられます。研究者らしいフィールドワークの記録です。また葬儀関係で言うと以下のようなフィルムもあります。
墓前の供物 牛の吸物とカチヂー
1971年に屋部で撮影された映像で「牛やきモノ」と箱には書かれていますう。牛料理と言うのも珍しいですが、供物ということから、儀式の型を記録したものと思われます。
1966年 伊計島 アジ神という踊り神
アジ神というのは初耳ですが、七年マールのアシビに登場する神様なのでしょうか。撮影地は伊計島。もちろん橋のかかる前の時代です。
1971年10月9日 綱引前夜祭
場所は書いていませんが、1971年10月9日といえば、那覇大綱挽きの前日。しかもこの年は、那覇市制5o周年で大綱挽きが復活した記念すべき年です。
などなど、これらのフィルムの動いているところがぜひ見たいものです。
が、大きな問題がありました。
フィルムの劣化が酷かった
まだ全部を確認していませんが、確認したどのフィルムも上の写真のように変形し、貼り付いているような状態。フィルムをリールから取り出そうとすると、パリパリとちぎれて細切れになっていくような状態でした。
僕らがフィルムの収集を急ぐのも、フィルムは常に劣化し続けているという現実があるからです。保存の状態がよければここまで悪くなることはないのですが、高温多湿の沖縄では、油断するとこういうことになってしまいます。こうなると僕らの技術では、フィルムを解体して、ライトテーブルの上で、いくつかのコマを写真で撮る事くらいしかできません。
復元の可能性について
ただ、まったく動いている映像が見ることができないかと言うとそうでもありません。希望はあります。その方法はフィルム修復の技術を持った業者にお願いすることです。
変色や画面の欠落、傷などで完全な形にはならないと思いますが、どうにか動画として見ることができるフィルムも少なくはないと思われます。また断片的であっても見てみたい映像があると思います。
しかし、こ方法には当然ながらお金がかかります。一本(3分20秒)で30万円弱くらいの経費が想定されています。それが90本ですので、総額2,700万円。
普段のように、フィルムに問題がなければ、自前で簡易デジタル化をしており、実質0円の経費でやっている作業だけに、これはもう想定外というか、ドを越した金額です。
とは言え希望を捨てたくはありませんので、とりあえずは全てのフィルムをリスト化、箱書きのデータも含めて公開したいと思います。幸い、フィルムは様々な地域やジャンルに分散しているので、部分的にでも出資協力が募れるかもしれません。まずは相談に乗っていただける地方行政、企業、自治体、個人の方に情報を届けていきたいと思います。
(文:真喜屋力)
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