貴重資料と言える映像をご紹介。高圧送電線を施設するのが困難な地形で、ラジコン飛行機を利用して問題を解決するという「プロジェクトX」のような映像。
No. 0408-00
タイトル:69KV 新名護幹線建設工事(2)
撮影者:遠藤保雄(Yasuo Endo)撮影メディア : 8mm Film/Color/18fps
本編時間: 25m9s
撮影時期 : 1974年10月25日
主なロケ地 : 沖縄県名護市
スキャン: Frame by Frame
1974年。海洋博に向けて、名護方面に新たな電力供給のための主要幹線を引く必要があった。工事は鉄塔を建てて、太くて重たいケーブルを引っ掛けて、つないで行く。言うのは簡単だが、複雑な地形のためにケーブルを隣の鉄塔に延ばすことができないという難問にぶち当たる。そこでラジコン飛行機の利用を思いつく。
まずは撮影者でもある遠藤氏の解説文を掲載するのでお目通しください。
送電線工事で採用されたユニークな工法(文:遠藤保雄)
1)ラジコン(Radio Contolm)模型飛行機での呼び線曳き;
海洋博関連の66kv新名護幹線新設工事を大日日本電線株式会社との合弁で受注した。
(株)国場組の電設部は、他工区を請け負った近畿電気工事株式会社その他本土一流建設会社が電線の沿線用Messenger Wire或いはその呼び線曳きにヘリコプターなど使用したようだったが、当社はラジコンのエンジン付 模型飛行機を利用して大きく工費を削減できた。
ラジコン模型飛行機での軽量で丈夫なビニールの呼び線曳きを採用するに当たって考慮したのは、曳航するに十分の力が得られるかだったが、力学初歩の公式 f=maでm(質量)が小さくともa(加速度)が大きければ大丈夫と踏んでカタパルトで発射したが見事に成功した(下記参考図)
つまり潤沢な予算があれば、ヘリコプターを飛ばして線を運ぶことができるが、そこは試行錯誤でのりきったという、現場の工夫が描かれているのだ。
工程としては、まずはラジコン飛行機で軽量なビニール紐(呼び線)を対岸へと運ぶ。その細紐に、少し太いロープを取り付けて反対側に引っ張る。そうやって少しずつ丈夫な太いロープに換えて行き、最後は重たい鋼鉄の送電ケーブルを届けるのだ。
山の上で滑走路もない状態なので、カタパルト(大型のパチンコの様なもの)で射出し加速度を得る作戦。飛行機は強風に煽られるが、見事に飛翔して行く。
ラジコン飛行機は無事に反対側の鉄塔に紐を届けて戻ってくる。狭い場所でどのように着陸するのかも見所であります。
フィルムの前半は、ラジコン飛行機を使った作業で、後半は高圧送電線をつなぐ作業が、段階を追って記録されている。1974年当時の工事のポイントが、きっちり抑えられている。最終的にはカメラマンも鉄塔に上り、地下足袋で作業する専門の鳶職の仕事がスリリングに描かれる。
もはや「仕事の記録」というものを越えた、撮影者の「記録魂」が垣間見える。
PS
映像の中ほどに、ラジコン飛行機以外の凧(ケーブルの上を風で走るようになっている)や、ボウガンが登場。使用している場面はないが、あの手この手の試行錯誤を感じさせる。
(文:真喜屋力)
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