舟橋 俊久 (琉球大学工学部非常勤講師)
私は二年前から沖縄に移住し、非常勤講師として「電力工学」を教えている。大量の電気を送る仕組みや、そのための機器や送電線・配電線について、さらにはそれらを雷などの自然災害から守る方法などについて教えている。こうした内容を教える際には、これまでの技術の歴史を知ることが重要になる。昔はどうやっていたのか、どう進歩してきたのかを知れば現在の技術についての理解が深まるのだ。
昨年のことだが、那覇市で電力関係の古い8ミリフィルムの上映会があった。電力というマイナーな分野にもかかわらず上映会は盛況だった。会場となったブラジル料理店にいっぱいの人が集まり、熱心にフィルムを見てお互いの話を聞いた。メモを取る人も多かった。8ミリ映像を撮影した遠藤保雄さんも出席され撮影当時の話をしてくださった。
主催の沖縄アーカイブ研究所によると、遠藤さんの撮影された8ミリフィルムは50本余り、時間にして2時間以上ある。遠藤さんは電気技師として工事を監督するかたわら、個人的に作業を記録していたようだ。それらのフィルムはすべて最新の技術でデジタル化されているという。撮影された時期は、戦後間もない1950年代から復帰前後の1970年代まで。内容は実に多彩で、鉄塔の組立、嘉手納-辺野古-名護、与那原-小那覇間の送電線の建設、与那原変電所や金武発電所における機器の設置・耐電圧試験・強度試験など、当時の工事の様子がうかがえる、これまで他県でも見たことがない、とても貴重なものばかりである。危険な作業を写したものも多かった。中には、米軍のヘリから地上や海上を撮影した映像もあった。私は、沖縄本島で発電量が足りない時期に、港に係留した発電機船から地上に電力を供給していたことを、この映像を見て初めて知った。
上映会のあと、私はこれらの映像を講義や講演で活用したいと考えた。まずは、送電線や変電所建設現場の映像をお借りして自分の講義の中で学生に見せてみた。反応は様々だったが、古い映像で珍しく、貴重な物を見せていただいたという感想が多かった。香港や台湾、沖縄で行われた国際会議では、自分の講演にこれらの映像を入れてみた。反響は大きく、海外の参加者からも、古い映像がよく残っていた、貴重な物を見たと絶賛された。
これらのフィルム映像は、今後も講義や講演で活用させていただくと同時に、さらに一歩踏み込んで映像にあるかつての現場を訪ね、関係者から聞き取りをしてみたいと考えている。未見の映像にも興味深いものがあるかも知れないので、隅々までつぶさに見直してみたい。さらには、沖縄の初期電力事業に関する調査結果として論文にまとめたいと思う。私の講演や論文に触れて、新たにこうした映像に興味を持つ研究者も出てくるかもしれない。そうした研究者が映像にアクセスしやすい形で、さらにアーカイブ映像が増えていくとよいと思う。
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