【FILMS】皇太子のパレード 1975

1975年7月。沖縄県のひめゆりの塔を訪れた皇太子(当時)が、火炎瓶を投げられる事件がありました。おそらくその前後のパレード(通過していくだけですが)の映像です。まず下の文章を読む前に、動画をごらんいただけると良いと思います。アマチュアカメラマンが撮影したピンボケの映像ですが、それ以上にアマチュアらしいユニークな映像です。

No. 0015-01
タイトル:皇太子のパレード 1975
撮影者:古波津清貞(Kiyosada Kohatsu)

撮影メディア : 8mm Film/Color/18fps
本編時間: 2m24s
撮影時期 : 1975年7月17日
主なロケ地 : 詳細不明:南部の道路 (沖縄県)
スキャン: Aerial Image

 

ごらんの様に映像は全編酷いピンボケです。歴史的な話題にしては残念です。しかし、そのこと以上に僕がこのフィルムをすきな理由は、ようやく皇太子が乗っていると思われる車が映った瞬間に撮影が停まり、いきなり次のカットでは通り過ぎていく後ろ姿の場面になっているところです。激しく肩透かしを食らったような映像です。

▲皇太子が乗っているとおぼしき車。遠くの建造物はなんだろう?

これがプロの報道カメラマンでは絶対にあり得ないことだし、記録映像としては失敗と言うことになるでしょう。しかし、僕はそこが逆にこの映像、アマチュア映像のおもしろさだと思います。

これは推測ですが、撮影者は目的の車が通りすぎるさいに、カメラを覗き続けることよりも、肉眼でしっかりと対象を見つめ、力の限りに手を振ることを選んだのではないでしょうか。たぶん嬉しかったんだと思います。この映像はそういった撮影者の心のありようを、いろいろと考える楽しみがあり、想像力を刺激されます。映っていることは大事ですが、映っていないことも重要です。少なくとも撮影しないという方法を選んだ撮影者の意図がそこにあるからです。そういう人の温もりみたいなものを手がかりに、あれこれ思いを巡らせるのが大好きなのです。

また、ついでに書いておくと、8ミリカメラのファインダーというのは、小さいうえに暗いので、覗いていてもあまりよく見えないのです。ピンボケになりがちなのも、そういう理由があります。おそらくこの映像の撮影者は、それほど撮影に慣れていなかったのでしょう。映像を後で楽しむことより、リアルな世界で体感することを選んだのではないでしょうか。

先ほど情報量ということについて書きましたが、この映像の最後。行列が通りすぎた後に、ロケ地の手がかりが映り込んでいます。「琉球民芸商会」という看板。どうやらお土産物やらしいこの建物の情報があれば、ロケ地がわかるかも知れません。古いタウンページとかにあるのかな。

(文:真喜屋力)

▲撮影地のてがかりとなる商店。

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