僕たちシネマラボ突貫小僧(以下、突貫小僧)は毎年、沖縄国際映画祭で「沖縄ヒストリカルムービー」部門を企画・運営している。これは、沖縄の文化や歴史、風景などの観点から再評価できる埋もれた名作・珍作を紹介するプログラムだ。
この「沖縄ヒストリカルムービー」の中で一番の人気のあるコンテンツは、「デジタルで甦る8ミリの沖縄」である。沖縄アーカイブ研究所(以下、研究所)が収集、デジタル化した膨大な8ミリ映像の中から、選りすぐりの作品を2時間に渡って上映するというもの。スクリーンのそばには研究所の所長・真喜屋力と、突貫小僧の當間早志が登壇。彼らの超マニアックな解説を聞きながら映像を見るという寸法である。しつこいぐらい丁寧な“弁士”がいてこそ成り立つ企画である。
「デジタルで甦る」の初お披露は2017年。以来、映画祭のカウントダウンイベントも含めて4回に渡って開催されてきたが、毎回、入場できない人が出るほどの満員を記録してきた。主催者側である僕が不思議だと思うぐらいなのだが、それは何故なのだろうか。
思うにこれは、作品の持つ力だといっても過言ではない。もちろん市井の人々が撮影してきたアマチュアの映像に過ぎないのだが、長い年月を経たことによって希少価値が生まれているのだ。上映してきたフィルムには、今ではもう見ることのできない貴重な沖縄の風景や行事、人々の着ている服装や髪型、モノが映し出されている。それが観客のノスタルジーを掻き立ててくれるわけだ。それは莫大な予算を投入したハリウッド映画や当代の人気スターが出演する作品に負けない、強烈な訴求力を持っていることに他ならない。それが「デジタルで甦る〜」成功の理由なのだろう。
なお余談だが、「デジタルで甦る」の一発目では、研究所に多数の自作フィルムを提供されてきた遠藤保雄さんが“93歳の新人監督”としてフィーチャーされた。ゲストとして登場した会場には県内主要マスコミが押しかけ、また映画祭の名物であるレッドカーペットにも登場。舞台となった国際通りを堂々と闊歩し、沿道に詰めかけた女の子たちから「おじいちゃんカワイイ!」と黄色い声援があったことを記しておきたい
「デジタルで甦る〜」はスターさえも生んだのだ。これってすごくない?
追記
今年開催予定の「第12回沖縄国際映画祭」は、新型コロナウイルスの影響で大幅縮小となり、すべての上映が中止となった。残念ながら「沖縄ヒストリカルムービー」もナシとなってしまったが、映画祭事務局から「来年は必ずやりましょう!リベンジです!」と引き合いが来ている。
(文:平良竜次)
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